大柴ひさみ

日米間のビジネス、マーケティング、コミュニケーションの違いは、さまざまな機会で実感することが多いが、同じ日に日米の「PR(Public Relations)」業界の人間とミーティングを持ち、そのプラクティスと姿勢の違いに非常に驚いた。 まず最初に地元サンフランシスコでテクノロジーに特化したIndependentのPR Agencyと、ポテンシャルのプロジェクトに関してミーティングを持った。印象的だったのは「Thought Leadership」というアプローチによるPR活動である。日本ではあまり耳にしない言葉だが、米国では、マーケティング、コミュニケーション、PRなどの業務をたずさっていれば、必ず耳にするアプローチである。 「Thought Leadership」とは、単なる自社商品やサービスに関する情報ではなく、発信者が属する特定の分野において、将来を見据えたテーマや課題の解決策などを提案して、議論を巻き起こすというコミュニケーション活動をいう。発信者は、そうしたConstructiveなコンテンツを発信することによって、そうした情報に関心を持つメディアおよびそのオーディエンスとエンゲージが図れて、その分野においてReputationを獲得することが可能となる。 そのミーティングの後に、日本のテクノロジー関連のPRのベテランに、日本のPRの実情を聞いたが、そのリアリティに、唖然としてしまった。そのベテランに言わせると、昨今の日本の「Traditional あるいはConventional なメディア」は、従来型の広告出稿が減少する現状の中で、PRエージェンシーやクライアントに、最初から「枠」扱いで値段をつけて、自社のイベントやコンテンツを「広告媒体」のように販売し、従来型の広告の埋め合わせをしているという。もちろん、私もそんなにナイーブではないが、彼からその詳細なやり方を聞くと、そこまでするのかと思うほどだった。